「焼杉(やきすぎ)」は、古くから日本の建築に用いられてきた伝統的な素材です。表面を焼いた杉板の外壁材で、趣のある美しさや高耐久性といったさまざまなメリットがあります。
近年ではそのモダンで洗練された美しさが注目され、住宅雑誌などでも見かけることが増えてきました。比較的価格が安く、コストパフォーマンスの良い外壁材としても人気が高まってきています。
そこで今回は、焼杉の持つ魅力やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
「焼杉について詳しく知りたい」
「使ってみたいけれどデメリットが気になる」
といったお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも焼杉とは?どんな魅力がある?
焼杉とは、無垢の杉板の表面を焼いて炭化させたものです。表面を焼くことで炭化層をつくるため、火や水に強く、防虫や防腐といった効果も期待できます。
もともとは西日本を中心とした民家で伝統的に用いられてきた工法で、火事や湿気から家を守る役割を果たしてきました。
焼杉の最大の魅力は、その独特の風合いにあります。炭化した表面は黒く、木目が際立ち、自然の質感を活かした重厚感のある外観が特徴です。
伝統的な木造建築のみならずシンプルでモダンな住宅にも調和するため、幅広いデザインにマッチする汎用性も魅力といえるでしょう。
建築家などが価値を再発見したことをきっかけに、現在では一般的な住宅でも使われることが増えてきています。
外壁に焼杉を採用するメリット
まずは、外壁に焼杉を採用する際のメリットを詳しく紹介します。
重厚感のある意匠性の高い外観になる
焼杉の黒く炭化した表面は、上質な重厚感を持ちます。
モダンな住宅デザインや和風建築のどちらにも合い、シンプルながらも印象的な外観を演出できます。
また、自然素材であるため、経年変化による風合いの変化も楽しめるのが魅力です。「外壁材に自然素材を使用したい」と考える方にとって、焼杉はおすすめの選択肢といえるでしょう。
コストパフォーマンスが良い
「焼杉は無垢材だから高いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実はとてもコストパフォーマンスに優れた素材です。
施工会社にもよりますが、価格はサイディング材などと同程度、タイルや塗り壁の外壁に比べれば半分ほどの費用で施工できる可能性があります。
耐久性が高い
焼杉は製造法によって「バーナー焼き」と「三角焼き」があります。耐久性はバーナー焼きで30年、三角焼きであれば50年以上持つといわれ、非常に高い耐久性があることが分かります。
一般的な住宅は10~15年程で塗装などのメンテナンスを必要とするため、それらにかかるメンテナンスコストを節約できるのも大きな魅力といえるでしょう。
耐火性に優れる
炭化した焼杉の表面は火が燃え移りにくく、万一火災が生じても延焼しにくい効果が期待できます。
ただし焼杉はあくまで木材のため、現在主流の外壁材と比べて防火性が高いという訳ではありません。防火規制のある地域では使用できない可能性もあるため、事前の確認が必要です。
防虫・防腐効果がある
焼杉の炭化した表面は、防虫や防腐効果があります。
木造住宅の天敵はシロアリですが、炭化層が虫を寄せ付けず腐りにくい性質を持つために、シロアリが定着しにくい環境をつくります。
断熱性が高い
焼杉は無垢の杉板を使用しているため、金属製の外壁材などと比べ熱伝導率が低く、室内外の熱の流出入を防ぐ高い断熱性を発揮します。
冬の寒さや夏の暑さが室内へ伝わるのを防ぐため、快適な室温が保ちやすく、少ない消費エネルギーでも冷暖房が効きやすくなる省エネ効果も期待できます。
環境負荷が少ない
焼杉は製造時に化学処理をほとんど行わない自然素材のため、環境に優しい素材です。また、使用済みの焼杉は土に還ることから、持続可能な建材として評価されています。
さらに、地元で伐採された杉材を使用すれば輸送時のCO2排出による環境負荷も減らせるため、エコ志向の方にとっては大きなメリットといえるでしょう。
外壁に焼杉を採用するデメリット
焼杉には多くのメリットがありますが、外壁材として採用する際にはいくつかのデメリットもあります。採用前に知っておきたいデメリットを紹介します。
触れると汚れる
焼杉の表面は炭化しているため、触れると手や服が黒く汚れることがあります。
ベランダの洗濯物などについてしまった場合には、落とすのが難しいケースも。お子様が触れて汚してしまう可能性もあるでしょう。
表面に塗装やブラッシングなどの加工を施し汚れにくさに配慮した焼杉もありますが、絶対に汚れなくなるわけではありません。炭も焼杉の特徴のひとつと心得て、上手に付き合っていく必要があるでしょう。
反りや割れが生じる
焼杉は無垢の杉材であるため、温度や湿度の変化によって反りや割れが発生することがあります。
特に、乾燥が激しい地域や急激な気候変化がある場所では、このリスクが高まります。
ただし、焼杉は一枚から張り替えが可能。不具合があったところだけ取り除けるので、メンテナンス性はとても良い材料です。
経年変化がある
焼杉は時間が経つにつれて色が褪せたり、表面の炭化層が剥がれたりすることがあります。
これは焼杉の特徴でもありますが、黒くツヤのある美しい外観を維持したい場合には定期的なメンテナンスが必要です。
自然の風合いを楽しむ方には魅力的な経年変化ですが、長期間美観を保ちたい方にとっては注意が必要です。
地域によっては使用できない
焼杉は炭化処理が施されているため燃えにくい性質を持っていますが、地域によっては防火規制などにより使用が制限される場合があります。
特に、都市部の密集した住宅地では建築基準法によって防火性能が求められるため、焼杉が使用できない可能性が高いでしょう。
設計担当者などに相談しながら、事前に地域の建築規制を確認することが重要です。
まとめ|焼杉は意匠性・機能性・耐久性に優れた外壁材
焼杉は、日本の伝統的な技術を活かした自然素材であり、意匠性や機能性、耐久性に優れた外壁材です。
重厚感のある美しい外観や、防虫・防腐効果、断熱性能など、多くのメリットを持つ一方で、汚れが付きやすかったり、反りや割れが生じる可能性があったりするなど、知っておくべきデメリットもあります。
焼杉を外壁材として採用する際には、これらのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自分の家のスタイルやメンテナンス計画に合わせて選ぶことが大切です。
自然素材の家づくりを手掛ける辰巳工務店では、お客様のご希望や予算に応じたさまざまな種類の素材をご紹介、メリットやデメリットをお伝えしながら最適なプランをご提案いたします。
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