家族が長年住まい続けるマイホームを計画するとき、デザインや間取りだけでなく「健康」に暮らすための対策も欠かせません。
健康住宅は、住む人の健康を第一に考えた一年中快適に過ごせる家。健康住宅で暮らすことで、健康被害のリスクを最小限に抑えながら心身ともに健やかな状態を保つことができます。
しかし、健康住宅が具体的にどんな家であるか、イメージが湧きにくい方も多いでしょう。この記事では、健康住宅の特徴やメリット、計画時に大切なポイントを解説します。
一年中心地よく、長生きも期待できる家。そんな家に住みたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
ー 目 次 ー
「健康住宅」ってどんな家?
健康住宅の特徴
健康住宅は、人の健康を重視して設計された家です。
住宅の環境に由来する主な健康被害には、「ヒートショック」と「シックハウス症候群」の2つが挙げられます。
ヒートショックは、急激な気温の変化によって血圧が乱高下し、心臓や血管の疾患が生じる健康被害。もう一方のシックハウス症候群は、建材などから生じた有害な化学物質による健康被害です。
健康住宅では、住宅を高気密・高断熱化して室内の温度を一定に保ったうえで、適切な換気設備を備え常に新鮮な空気を取り入れることで、健康被害のリスクを最小限に抑えます。
健康住宅の具体的な特徴は以下の通りです。
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健康住宅の特徴 |
建材 |
有害物質の発生が少ない、または浄化採用のある建材を使用。無垢材や漆喰などの自然素材が最適。 |
気密・断熱 |
高気密・高断熱によって、外気の影響を受けにくい室内環境を作る。 |
換気 |
高気密でも常時空気の入替が可能な換気システムを採用。 |
湿度 |
低湿度や高湿度による健康被害を防ぐための調湿機能を導入。 |
家のつくりは寿命に影響する
1990年代ごろから社会問題化したシックハウス症候群は、建材に関する法規制の強化や24時間換気の義務化により、住宅業界での対策は一定程度進みました。
一方、ヒートショックで死亡する人は年間1万9,000人に上ると言われ、交通事故による死亡者数約3,500人、熱中症による死亡者数約600人と比較しても膨大な件数です。
また、世界保健機関のWHOは冬季における住宅の室内温度18℃以上を「強く勧告」し、室内温度が一定以上に保たれることで、喘息などの呼吸器系疾患、高血圧などの心血管疾患、風邪やインフルエンザなどの疾患のリスクを減らすエビデンスを発表しています。
現在は日本でも家の省エネ化が進められていますが、「家の中で温度差があるのは当たり前」と認識する方はいまだ多くを占め、万全の対策が行われていないのが実情です。
健康住宅は、単に快適なだけでなく、家族の命に関わるリスクを減らす家として、今後多くの方に採用されるべき住まいのかたちと言えるでしょう。
健康住宅のメリット
人の健康と快適性に関するメリット
住宅は家族が生活の大部分を過ごす場所です。そのため、住宅が健康に与える影響は少なくありません。
健康住宅は、人の健康に配慮した設計により、結果として快適性も得られる家づくりが実現します。
健康住宅をつくるうえで重要な点は、高気密・高断熱の仕様にすること。冬の寒さや夏の暑さの影響を受けにくくし、室内の温度を一定に保ちます。リビングなど家族の共有空間だけでなく、廊下やトイレ、浴室なども温度差を感じにくい仕様にすることで、家中どこでも心地よくヒートショックのリスクが少ない住まいを目指します。
次に重要視されるのは建材の選定です。有害物質を発生させない、または最小限に抑える材料が使用され、シックハウス症候群などのリスクを軽減します。
さらに、換気設備についても重要です。適切な換気計画により、家の中の湿気やカビ、ダニといったアレルギー物質をコントロールし、居住者の健康を保ちます。
環境配慮と経済的なメリット
健康住宅は高気密・高断熱化が図られるため、冷暖房効率がアップし、少ないエネルギーでも快適な室内温度を維持できる省エネ型の住宅になります。
結果として、年間の光熱費削減、CO2排出の抑制といった効果が期待できます。人の健康だけでなく、家計にも地球にもやさしい家と言えるでしょう。
また、室内の温度差が少なくカビや湿気が発生しにくい家は、構造が傷みにくく住宅寿命にも良い結果をもたらします。長期的にとらえれば、数十年後に大掛かりなメンテナンス工事が不要になる可能性もあります。
住宅価値向上のメリット
建材や断熱性、換気等に設計上の配慮が行き届いた健康住宅は、住宅仕様としての付加価値が高く耐久性も期待できるため、不動産価値にもプラスの影響を及ぼします。
前項の通り、住み続ける場合はランニングコストやメンテナンスコストの削減が期待でき、将来にわたって住宅価値を維持し続けることに寄与します。
いずれ売却を検討する際にも、健康への意識が高まる現代社会において、健康住宅という特性は大きな魅力と捉えられるでしょう。
健康住宅における仕様は「長期優良住宅」としての仕様と共通する点も多いため、国から認定を受ければさらなる不動産価値の向上も見込めます。
一般的な住宅に比べ初期投資は大きくなりますが、国の定める基準に則ることで補助金を活用できる可能性もあります。長期的に見れば、初期投資を回収できるだけの価値は十分にあると判断できるでしょう。
健康住宅を建てる際のポイント
自然由来の素材を活用する
健康住宅での建材選びは人体に害を及ぼす物質が含まれていないことが重要ですが、自然由来の素材であれば、むしろ空気を浄化する作用を持つものもあります。
自然素材として取り入れやすい主な建材の例を見てみましょう。
- 無垢材:構造体や、フローリング・天井・壁などの仕上げ材に採用できる建材。樹種により調湿効果や防虫効果、殺菌効果、リラックス効果などが期待できる。
- 漆喰:消石灰化したサンゴに由来する漆喰は、調湿性や有害物質吸着効果に優れる。
- 珪藻土:珪藻が化石になり海底に堆積したものが珪藻土。漆喰と同じく調湿性や害物質吸着効果に優れる。
- イ草:天然のイ草が湿気や有害物質を吸着し、空気を浄化。香りによるリラックス効果もあり。
断熱性と気密性を高める
家の高断熱化を図るには、家の外皮と呼ばれる「屋根・外壁・床」の断熱性能を高めることが重要です。具体的には、性能の高い断熱材や窓サッシ・玄関ドアの採用が挙げられ、設計時の計算値が地域ごとに定められた基準値を超える性能に達することで、高い断熱性が期待できます。
また断熱性を維持するには、家中のすき間を極力少なくして気密性を上げることも重要。気密対策では、外皮への気密テープやシート貼り、すき間の生じにくい断熱材や窓サッシの採用といった内容が挙げられます。
換気計画を重視する
建築基準法では、室内空気の入替のために24時間換気設備の設置が義務付けられています。
適切な換気がされていれば湿気が滞留することもなくなるため、結露の発生を抑え、カビやダニの繁殖を防げます。
現在一般的な換気システムは強制排気による「第三種換気」ですが、外気温の影響を受けにくい「第一種換気」や、自然対流を利用する「パッシブ換気」が、健康住宅と相性の良い換気システムです。
施工経験が豊富な会社に依頼する
健康住宅の設計では、建材や換気方式、住宅性能や間取りなど、健康を維持するためのあらゆる配慮が求められます。現在は同様の仕様をもつエコ住宅などの施工実績を積み上げる住宅会社も増えてきましたが、それ以上の設計的配慮を必要とする健康住宅は、施工経験が豊富な会社でなければ対応が難しいケースも少なくありません。
「健康住宅」という名称を掲げている会社は非常に少ないですが、「自然素材」かつ「長期優良住宅」を扱う会社であれば同様の施工が可能なケースもあります。ホームページや地域の評判をチェックしながら、良いと感じる会社があれば実際に相談してみましょう。
まとめ
人を守るシェルターの役目を果たす住宅。家族が長く安心して健康に生活するためには、健康被害のリスクが少なく快適な住空間を維持することが必要です。
建材や気密・断熱性、換気システムに考慮しながら、シックハウス症候群やヒートショックなどを起こさない健康的な住まいづくりを目指しましょう。
「永く住まう家」をモットーとする辰巳工務店では、自然素材を使用した健康にやさしい家づくりを行っています。
福岡で新築やリノベーションをご検討の方は、ぜひ辰巳工務店までお気軽にご相談ください。